土地改良とは

土地改良事業とは?

「農は国のもとい」という言葉があります。この意味は文字どおり、農業は、国の物事の基礎・土台であるということです。
農業とは、「水田や畑を利用して食用作物、観賞用花卉、果物などを生産するために耕作栽培すること」ですが、農業を営むには、水田や畑などの農地をそのままの状態で利用するだけでは作物等を十分に生産することはできません。
では、作物等を育てるには、何が必要でしょうか?
その一つには、「水」の確保・供給があります。
古くは西暦700年頃、讃岐の国の国守こくしゅが築造し、同820年頃、弘法大師(空海)が改修したとされる香川県の満濃池まんのういけは、現在も日本最大級の農業用のため池で、その時代から、国の基である農業を営むに必要な農業用水を確保するために、当時の人々が苦労に苦労を重ね築造したものです。
日本では、古くから、農業用水を確保するためにダムやため池などの農業水利施設を築造したり、確保した農業用水を農地に配水するために必要な用水ポンプを設置したり、農業用の用水路を整備してきました。
農業用水の確保に加え、農地が湿地であると有用な作物等の栽培の支障となるので、農業用の排水路やその排水を河川等に排出するために必要な排水ポンプを整備してきました。
また、日本はその地形条件や農地解放(※1)等の歴史的経緯から、農地が分散錯圃ぶんさんさくほ(※2)の状態にあったので、農地のほ場整備(※3)を行い、分散錯圃を解消し、更には、農業経営の規模拡大に向け、農地の大区画化を行うためのほ場整備や、農道等の整備、加えてこれら施設の維持管理も行っています。
これらの営農環境を整えるための施設の整備やその維持管理を西暦1949年に制定した土地改良法という法律に基づき行う事業を「土地改良事業」といいます。 土地改良事業は、「国の基である農業」を、営農環境を適切に確保するという側面から下支えする、いわば縁の下の力持ち的な存在です。

※1 農地解放とは、第二次世界戦争後の西暦1947年にGHQの指揮の下に行われた農地の所有制度の見直しのこと。具体的には、地主制度を解体し、小作人に農地の所有権を移転した制度改革のこと。
※2 分散錯圃とは、一つの農家が所有・耕作している農地が、あちこちに分散している状態のこと。農地解放により、小作していた農地が小作人に所有権が移転された結果、農家の所有する区画の小さな農地が分散したことに端を発する場合が多いとされている。
※3 農地のほ場整備とは、農地の大区画化、用排水路・農道の整備、農地の集団化を図ることによって、農地の耕作条件等を整備する事業のこと。

土地改良区とは?

土地改良区とは、土地改良法の規定に基づき都道府県知事の認可により設立される公法人です。
公法人とは、公の事務を行うことを目的とする法人で、一定の範囲において国家的権力を与えられています。
土地改良区は、土地改良事業という公の事務を行うことを目的に設立される法人で、当該土地改良区の区域の範囲において、組合員(原則として農業を営む者)の3分の2以上の同意で土地改良事業(建設及び維持管理)を実施することができ、当該事業に組合員を強制加入させ、当該事業に要する費用を強制的に徴収することができるなどの権限が与えられています。
また、土地改良区の多くは、土地改良事業により整備された施設の維持管理を行っています。特に、農業用の水路は、その総延長が約40万Km、地球10周分にも及びます。この地球10周分にも及ぶ農業用の水路の大半を全国約4,100の土地改良区において、維持管理しています。
このように、土地改良区は、土地改良事業による農業水利施設や農地の整備、更には、整備された施設の維持管理を通じ、「国の基である農業」を下支えしています。加えて、農業用のため池や用水路を適切に維持管理することにより、防火用水、生態系の保全、消流雪用水などの多面的な機能(これらの機能に用いられる水は「地域用水」といいます)も発揮しており、農業生産のみならず、良好な農村環境の維持保全にも大きく寄与しています。


土地改良事業団体連合会とは?

土地改良事業団体連合会は、土地改良法の規定に基づき農林水産大臣の認可により設立された公益的性格を有する法人です。
土地改良事業団体連合会には、都道府県を単位に設立される法人(以下、「地方連合会」といいます)と全国を単位に設立される法人(以下、「全国連合会」といいます)があります。
地方連合会では、土地改良区を始め各都道府県内で土地改良事業を行う者を会員として、全国連合会では、地方連合会と全国の一定規模以上の地域を有する土地改良区を会員として運営されています(いずれも加入は任意です)。
地方連合会及び全国連合会の主要な業務は、それぞれの会員等に対し、土地改良事業を適切に実施するとともに、土地改良事業で整備された施設を適切に維持管理するために必要な技術力向上に向けた研修、土地改良区の運営に必要な会計等の研修、ほ場整備に伴う換地処分(※)をより円滑に実施するための情報提供などを通じ、会員が行う事業及び事務のサポートを行っています。
また、これらの会員へのサポートのほか、国家的見地から公益性が高いと考えられる補助事業や、本来国が行うべきと考えられる事業を国に代わって行う委託事業(請負)を実施するとともに、国や都道府県が行う土地改良事業への協力も行っています。

※換地処分とは、ほ場整備などの実施により農地の形状等が変更されることとなるが、工事前の農地について所有権等の権利を有する者に対し、工事前の農地にかえ、工事後の農地を割り当て、最終的にこれを帰属させる行政処分のこと。

水土里みどりネットとは?

水土里ネットとは、土地改良区、地方連合会と全国連合会の愛称・ニックネームで、平成14年度、全国の関係者からの応募提案と投票によって決定されたものです。
「水土里」の持つ意味は、以下のとおりです。

 

「水」は、土地改良区が管理し農地に供給されている農業用水を意味していますが、農業用水の有する地域用水機能も内包しており、水を通じ、農村地域内のネットワークが形成されています。

 

「土」は、農業用水により潤い農作物を生産する豊かな水田や畑などの農地を意味しています。また、農業用水と農地のネットワークにより貴重な生態系が保全されます。

 

「里」は、農村や農村環境を意味しています。農村は日本の原風景であり、そこには人の手が加えられることにより維持されてきた二次的自然環境があり、人々の生活空間となっています。農業用水と農地のネットワークは、農村で生活する人々の自然環境でもあります。また、都市住民にとっては癒やしの空間となります。

 

私たちは、関係者が水土里ネットという愛称を口々に唱え、土地改良区、地方連合会と全国連合会の組織相互間のネットワークにより、日本の元気な農業を下支えし、応援していくことを目指しています。